バイト数回目の夜のわくわく
普段夜に出歩くことはないから、カフェの自動扉の内から見た、若者の集団の少し酔ったような大声に、別世界に来たような錯覚を起こした。
アルバイトのそのカフェは繁華街のはずれにあり、二階建てだった。
夜九時。蛍の光が流れ終わって、一人初めて暗い二階の掃き掃除をする。
映画の主人公のような気分になって、事件が起きないかわくわくした。死体でもオバケでもなんでも出てこい。私は物語のヒロインで、誰かが助けてくれる。
夜の少しにぎやかな町が好きだ。
みんなが開放的になって、集団の盛り上がりを見ていると私も大人になったなと思う。
自分は真面目でピュアなんだぞ、みたいなオーラを振りまきながらその人たちの傍を抜けて帰路に着く。
なにイキってんだって自分でも思うけど、わくわくしたならいいや。